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2021.01.29

読んで・観て、キレイを高める! 齋藤薫さんの映画エッセイvol.6

読んでから観ても、観てから読んでも、キレイになれる!
女性の美しさをあらゆる方面から解き明かし、美容ジャーナリスト/エッセイストとして多くの著書や連載を持つ齋藤薫さんが綴る、読むだけでスッと心が軽くなる『美容×映画』連載エッセイ。

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今回は、家族を描いた映画『チョコレートドーナツ』『マグノリアの花たち』『ハニーボーイ』を、齋藤薫さんならではの視点でご紹介します。

誰かと生きていきたくなる、血縁を超えた家族愛を描く映画

ファミリー映画は数え切れぬほどあるけれど、全く別の角度から家族の大切さを教えてくれる“人と人との絆を描いた映画”もまた少なくない。
コロナ禍もあって、今この時代を1人で生きていくのは辛すぎる、そういう思いにさせられる作品を一年の始まりに向けて覗いてみたい。


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観るほどに、「最も結婚がしたくなる、1人で生きてはいけないと思わせられる映画」

上映から7年が経とうという『チョコレートドーナツ』が、今また話題である。その作品に心打たれたという宮本亜門氏の演出で舞台化されることを記念して、再上映されたのだ。
 

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ゲイのカップルが、“育児放棄された障がいのある少年”を自分たちの子供として育てたいと、法の壁や世間の偏見と必死に戦う姿を描くこの映画。舞台となる1970年代当時には、同性愛者に対する世間の風当たりは極めて強かった。そんな背景のもと、実話をベースに生まれたストーリーだけに、血縁を超えた家族愛とはこんなにも力強く、こんなにも切ないものなのか、そういう感慨が何度も何度も押し寄せる。
そして愛情は愛情を呼び、愛するほどに愛されて、愛されるほどに愛せるのだという、知っているはずなのに現実の社会ではなかなか実感できずにいる“愛の法則”を教えられるのだ。差別と偏見があるからこそ際立っていく人間愛、そこに生まれる家族の絆は、鋼のように強いのだということを。
 
この映画を「最も結婚したくなる映画」と言った人がいる。誰かと一緒に生きたくなると。そう、まさにそういう思いでこの映画を観て欲しいのだ。

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©2012 FAMLEEFILM,LLC  『チョコレートドーナツ』より

ファミリーをテーマにした映画は数限りなく存在する。それらはどう転んでも、最後には“家族ってやっぱりいいな”という感慨をもたらすことになるわけで、年末年始には確かに1本は見たくなる。
しかし、この作品を観ると“家族っていいな”ではなく、むしろ家族が無性に欲しくなるのだ。1人で生きている人はもちろん、1人でない人も、家族という単位で生き直さなければという、強い思いに駆られるのだ。1人で歩くのは悲しすぎる、だから思いを1ヶ所に持ち寄って、共に生きていくという意味の家族が、この上なく恋しくなるはずなのである。
 
例えば、ニューヨークの同時多発テロの時。大震災の時。1人で生きていくのが辛くなって結婚する人が増えたと言われるけれど、何かそうしたずっしりとした重さが、1人で生きてはいけないという思いに強く掻き立てる。そういう意味では、1人が嫌になった時、また逆に家族に嫌気がさした時、見るべき1本である。


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いつか一緒に暮らそうね、そう言える友人がいること。そこにも1つの家族の形

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ある年齢から、友人の大切さが身に染みるようになる。家族がいてもいなくても、それとは全く別の次元で、人生における友人の必要性に強く囚われるようになるのだ。それも、いつの日か全員が1人の単位になった時、まるで家族のように、いや家族以上に心を解き放して日々語らう相手が必ず必要になるからなのだろう。
歳をとったら一緒に住もうねという、本気とも冗談ともつかないような会話を友人同士することで、未来がふっと開けていくようなそんな心地よい希望で心が満たされる。
それがなぜなのかを教えてくれるのが、この『マグノリアの花たち』なのだ。

アメリカ南部、花々が咲き誇る幸せの町にたたずむ一軒のヘアサロン、そこに集う女性たちのおしゃべりや悲喜こもごもで綴られる華やかな作品である。
 

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『マグノリアの花たち』より

美容室のオーナー、そこに仕事を求めてやってくる訳ありの若い美容師、元町長の夫を亡くした妻、いつも辛口、いつも騒動を起こすその“悪友”、持病を抱えながら結婚出産を果たす娘とその母親……6人の女性たちをシャーリー・マクレーン、ジュリア・ロバーツ、サリー・フィールド、ダリル・ハンナなど、まさしく芸達者といえる多彩な女優たちが演じる。
もともとは、出演者が6人の女性だけという密室劇が下地となった作品らしく、親娘以外はただのご近所付き合いという女性たちの、ウィットに富んだ会話が小気味良いが、やがてストーリーは思わぬ展開を見せるのだ。
 

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『マグノリアの花たち』より

そこで改めて、人生の財産は友人なのだということを思い知る。ただこれは何も、女の友情を描こうとしているわけではない。憎まれ口をきいたり、ちょっとした怒りをぶつけてみたり、仲が良いのか悪いのか、そのあたりも有りがちな関係性をさらりと描いていて、それが女同士の友情の形なのだと誇張するような場面も特になく、もっともっと軽やかで日常的な女たちのおしゃべりが続く。でもだからこそ、そういう時間に日常の幸せがあるのだということを、逆にまざまざと見せてくれるのだ。
そして、1人の単位となった女性たちがやがて、誰からともなく一緒に生きていきたいと思い始めるのかもしれない未来をそこに予感させてくれる。別に一緒に住む訳でなくても、ただいつも何となくそばにいて、何となく会話をする日々、それが人生になっていくというしみじみとした未来を暗示するのだ。
 

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『マグノリアの花たち』より

もちろんそこには、1人ひとりの幸せもあれば不幸せもある。生もあれば死もある。そこにお互い必要以上に立ち入らず、ただ静かに、ときには賑やかに見守るような関係性、それもまた、血の繋がった家族には決して成し得ない、もう1つの家族の形なのだろう。
「遠くの親戚よりも近くの他人」という言葉があるけれど、来たる人生100年時代、誰もが1人の単位で生きていく時代が必ずやってくる。まさにその時、遠くの親戚よりも、何だかいつも近くにいる友人たちが、いつの間にか家族のような穏やかな安心感を与えてくれる、その日のほのかな幸福感が、花々の香りとともに湧き上がってくるような作品である。


 体は子供、でも大人の心を持ってしまった少年の苦悩。魂年齢の逆転がもたらすもの

「女の子は母親が大好き」。本当に長い間、それがこの世の道理のように思われてきた。ところが誰かの告白をきっかけに「実は私も、母親が嫌い」「私の母親も毒母」そう明言する人が昨今にわかに増えている。その結果、家族というものを改めて考え直さざるをえなくなったのだ。
そもそも母親と娘という極めて近い関係にある女同士が、実は人間関係として最悪の状態にあったとしたら、それは本当に不幸なこと。しかし現実には、最も濃密で抜き差しならない、ある種宿命の関係だからこそ、母親という人格を許せなくなっている女性が少なくないこと、実は誰もがうすうす気づいていたことなのかもしれない。
 

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そう、2020年のコロナ禍の中でも大きな注目を浴びた『ハニーボーイ』は、幼い少年とその父親の、決して真っ当ではない親子関係を描いている。子役として大成功している12歳の少年、自らをその付き人と称し、息子のギャラで生活を営むも、前科もある乱れた生活を正すこともできずに息子の足を引っ張り続ける父親。まさしく毒親である。

しかし少年は、父親を憎むことなく必死で愛そうとする。そして愛されようともする。あまりにも健気な心はいつの間にか傷つき、10年後の少年はアルコール中毒で施設にいた。俳優を続けながらも、少年時代のトラウマで精神のバランスは崩れつつあったのだ。

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『ハニーボーイ』より

親子といえども、また血の繋がりがあろうとも、親と子は所詮、個人と個人の人間同士。そして実は、親よりも子供のほうが、精神的にはるかに大人であるケースは決して少なくないのだ。ただその不条理、精神年齢の逆転現象を、こう理解することはできないだろうか。「未熟なままの大人は、前世でまだほとんど人間を経験していない幼い魂なのに対し、子供のほうは前世で多くの人間を経験している古い魂である」と。その魂年齢にどうにもならない差があるから、またそれが逆さまになるから辛いのだと。毒母もおそらくはそうした未熟な魂が災いしているのに違いないのだ。
 

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『ハニーボーイ』より

そういうふうに、精神的に逆転したまま親子になってしまった運命を乗り越えるために激しく苦悩するのは、もちろん子供のほう。しかし、そうした魂年齢の差を子供心にちゃんと悟って、むしろ親を逆に自分の子供のように見つめることができる高潔な魂の持ち主も、世の中には少なくないのだ。
この少年もそうだった。体は子供、心は大人という、危ういまでのアンバランスな状態、それがあまりにも極端な形だったから、精神にかかる圧が強すぎただけ。
あるいは子供の頃、親子が逆転していたことを認めたくない、やっぱり父親を父親なのだと何とか思い込ませようとしていたからこそ、心が前後不覚になっていただけなのかもしれない。


 人は親との関係で、人間性を整えていく。もともと持っている魂の質を高めるべく

母親を好きになれなかった少女は、おそらくは未熟な母親のもとで早々と大人にならされるに違いない。その性急な成長に体が追いつかず苦しい時期もあるのだろう。でも魂年齢が自分のほうがはるかに上なのだと考えれば、母を許すこともできるのではないだろうか。そしてなおさら、魂レベルの高い存在になれるに違いないのだ。
 

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『ハニーボーイ』より

最終的に自分が幸せであるかどうか、それはやはり家族というステージにおいて判断されるもの。近くにいても遠くにいても、家族との関係性抜きには語れないものだからこそ、そうした家族との“正しい距離感”をうまく取れるようになった時に、人は幸せになれる。いやどんな環境にあっても、心に平和を宿した人間になれるはずなのだ。子供のうちはそれが難しいから、立派な魂を持った子供は苦悩するのだけれど。すなわちそれが『ハニーボーイ』。
ちなみにこの作品、父親役を演じたシャイア・ラブーフが子供時代の自分自身の体験をもとに、自ら脚本を描いた実話である。それを知ると尚さらに、一抹の切なさとともに、ある種の希望が湧いてくるはずである。 


 
次回は、「時代の変化を感じるときに観ておきたい映画」をテーマにお届けします。お楽しみに。

イラスト:河村ふうこ

<掲載映画あらすじ・作品情報>

『チョコレートドーナツ』

僕たちは忘れない。ぽっかりと空いた心の穴が愛で満たされた日々—。
 
1979年、カリフォルニア。シンガーを夢見ながらもショーダンサーで日銭を稼ぐルディ。
正義を信じながらも、ゲイであることを隠して生きる弁護士のポール。
母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年・マルコ。
世界の片隅で3人は出会った。そして、ルディとポールは愛し合い、マルコとともに幸せな家庭を築き始める。
ポールがルディのために購入した録音機でデモテープを作り、ナイトクラブへ送るルディ。
学校の手続きをし、初めて友達とともに学ぶマルコ。夢は叶うかに見えた。
しかし、幸福な時間は長くは続かなかった。ゲイであるがゆえに法と好奇の目にさらされ、
ルディとポールはマルコと引き離されてしまう……。
血はつながらなくても、法が許さなくても、奇跡的に出会い深い愛情で結ばれる3人。
見返りを求めず、ただ愛する人を守るために奮闘する彼らの姿に我々は本物の愛を目撃する。
 
『チョコレートドーナツ』
DVD:1,800円(税抜) 配信:https://Movie.lnk.to/choco
発売元・販売元:ポニーキャニオン
©2012 FAMLEEFILM,LLC

『マグノリアの花たち』

アメリカ南部ルイジアナ州の小さな町。しっかり者の母親マリンは娘シェルビーの結婚式の準備で大忙しであった。町の社交場であるトルービィの美容院でいつも通りおしゃべりに花を咲かせていた時、シェルビーは糖尿病の発作に襲われる。彼女は難病を抱え、結婚しても子供を産んではいけない身体だった。幸せな結婚生活を送るシェルビーだったがクリスマスの日、母に妊娠したことを打ち明け・・・。
 
『マグノリアの花たち』
DVD:1,551円(税込) 発売・販売:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©1989 TRISTAR PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ハニーボーイ』

ハリウッドの人気子役として活躍する12歳のオーティスは、いつも突然感情を爆発させる前科者で無職の“ステージパパ”ジェームズに、振り回される日々を送っていた。そんなオーティスを心配してくれる保護観察員、安らぎを与えてくれる隣人の少女、共演する俳優たちとの交流の中で成長していくオーティスは、新たな世界へと踏み出すのだが—。
 
『ハニーボーイ』
DVD価格:3,800円(税抜) 発売・販売元:ギャガ
©2019 HONEY BOY, LLC. All Rights Reserved.

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監修 齋藤 薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌やウェブサイトにおいて多数の連載を持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。鋭い視点に優しさと強さを含んだ独自のエッセイは、性別や年齢を超えた多くのファンに支持されている。『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)、『キレイはむしろ増えていく。大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)など著書多数。

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