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2020.12.11

読んで・観て、キレイを高める! 齋藤薫さんの映画エッセイvol.5

読んでから観ても、観てから読んでも、キレイになれる!
女性の美しさをあらゆる方面から解き明かし、美容ジャーナリスト/エッセイストとして多くの著書や連載を持つ齋藤薫さんが綴る、読むだけでスッと心が軽くなる『美容×映画』連載エッセイ。

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今回は、主人公が1人旅をする映画『食べて、祈って、恋をして』『トスカーナの休日』の2作品をセレクト。人生が変わる旅があるということを、齋藤薫さんならではの視点でご紹介します。

1人旅は、まさに人生を見つけに行く
「運命の旅」

2020年は旅行好きにとっては苦しい時間だったはず。でも今いよいよ新たな旅の始まり。改めて、今まで気づかずにいた旅の魅力を見つけ、旅の先にある新しい扉を開けるときがきた気がしている。どこにも行けなくなる、なんてことが起こりうるのだと思い知った今、1つ1つの旅をもっと充実した重厚な時間にするため、2つの映画を通して旅の意味を考えたい。この2つの“1人旅”はまさに人生を見つけに行く旅。これを観て人生観が変わった人が少なくない。だからもう一度、1人旅の醍醐味を見つめ直したいのだ。


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傷心旅行の理想の形とは? 正しく旅をすれば、人をちゃんと幸せに前向きにしてくれる

「女は失恋すると、1人旅に出る」
最初に言ったのは誰なのだろう。少なくとも半世紀以上も前から、それは旅の1つの法則のように言い伝えられてきた。いわゆる「傷心旅行」の定義として……。
 
ただ実際のところ、その哀愁漂う提言に誘われるように、傷心のまま1人旅に出かけた人は、おそらく皆その旅先で後悔するのだろう。どこへ行っても、1人であることを思い知らされ、孤独感が増すだけだから。それこそ映画のワンシーンのように、憂いのある自分の姿を誰かが眺めていてくれるわけでもなく、イメージしていたような切なくもロマンティックなシーンにはならないのである。
逆を言えば、よほど心が強く、孤独に強い人でないと、傷心旅行は向いていないと思い知るばかりだったりするはずなのだ。
 

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『食べて、祈って、恋をして』より

でも一方にこんな事実がある。夫に浮気をされ、離婚をして疲れ果て、文字通りの傷心旅行として1人旅に出かけ、その先でたまたま知り合った男性ととても自然に恋に落ち、ほどなく再婚したという女性を知っている。知り合ったのは船の中。いわゆる豪華客船の長旅ではないものの、船中泊する小旅行での出会いは、デッキの上だったという。

やっぱり映画のようなドラマは起こり得るのである。そして何より、“旅の映画”の傑作は、そのことごとくが傷心旅行の理想の形を教えてくれている。しかも、映画における女旅の設定は、これが見事に、恋に敗れたり、離婚したことをきっかけにしている。そして決まって1人……。
「女は失恋すると、1人旅に出る」は、やはりこの世の大原則なのである。正しく旅すれば、人をちゃんと前向きに幸せにしてくれる、それが傷心旅行ならば、その方法その心得をやはり知っておきたいと思ったわけである。心の準備として。
 

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まず何と言っても、 『食べて、祈って、恋をして』。結婚生活は破局を迎え、新しい恋人との同棲生活だって早くも喧嘩ばかり。そういうキツイ生活の中で思い立ったのが、長い1人旅だった。
タイトルの通り、まずイタリアに行って美味しいものを食べ、インドに行って心の修行をし、最後にバリに行くのは、以前バリ旅行したときにある老人から「あなたは必ずここに戻ってくる」と言われたから。それがずっと心に残っていて、そもそものこの旅の動機の1つになったこともあったからだった。


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受け身ではない、あくまでも能動的に旅をすること。それこそが旅の醍醐味

この作品を見て、まず思うのは「自分もこんな旅ができたら」ということだったのではないだろうか。特にいつまでという期限を決めてはいない、ある意味、気が済むまでそこにいるというスタイル。そういう旅が許される環境にあること、それ自体を羨ましく思ったのではないだろうか。こんな旅ができる人生そのものに憧れてみたりしたのではないか。
そして、まさに“食べて、祈って、恋をして”、そこにはいつも動詞がある。もちろんサイトシーイングも行為だけれど、受け身ではない、あくまでも能動的に旅をすること、それこそが旅の醍醐味なのだと強く思ったはずなのだ。
さらに動詞も1つではない、その国その国でいろんな動詞を散りばめること、そんな多彩な旅ができたらまさに理想、そう思ったはず。またそれができるのは、長い旅であるのはもちろん、1人旅だけだということにも気づかされるのだ。
 

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『食べて、祈って、恋をして』より

それがたとえ傷心旅行であったとしても、旅はただ傷ついた心を癒やすために行くものではないのだと、この旅を見ていると思う。マイナスになった自分をゼロに戻すのが、リセットなのだとしても、これは短期間にプラスへもっていく。それどころか今まで想像もしなかった未知の自分と出会い、人生が2倍に膨れ上がるような劇的な旅もあるのだと、気づかされるのだ。
 
さらに言うなら、こういう風に旅によって人生をリセットするためには、その旅人自身が、知性も感性も豊かで、しかも愛情豊かな人間でなければならないという事も教えられる。
薄っぺらで見えっ張りで、自分のことしか見えていない人間がいくら1人旅をしても、こういう風に心が豊かになったりはしないのだと。知識や経験は増えていっても、人生が変わることはない。どんなに長く旅をしても、おそらくはただの記憶しか残らないのだろう。
つまり旅はその人自身の、“人としての質”を問うものなのである。


 精一杯の心を込めて行く旅。だからこそ得られるたくさんのもの

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『食べて、祈って、恋をして』より

主人公のリズは、旅先で様々な人と関わりを持つ。単に親しくなるだけでなく、それぞれと精神的に関わっていく。でも映画だからね、フィクションだからね……そう思ったらそこまで。旅先で知り合った人のために寄付を募って彼女を幸せにしてあげるようなことまでできてしまうのは、確かに物語なのかもしれないけれど、そこまで深く人と関わることができるかどうかは、全て自分の心の熱さ、人間としての愛情の度合い、それ自体に関わっている。
そこが旅の質を左右する最大の決め手なのではないかと思うのだ。そもそもその土地その土地で新しい人間関係が作れるのかどうか、それ自体大きなハードルだ。でも、ちゃんと人間が好きならば、きっと自然に心の交流ができるのだろう。旅が好き、それ以上に人が好き、そういう人こそが、自分の未来を切り開くような素晴らしい旅ができるのだと、そこまで教えられる映画である。
 

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『食べて、祈って、恋をして』より

私自身、旅に出るときにいつも思い出す2つの言葉がある。その1つが、孔子の言葉で「どこに行くにでも、心を込めて行きなさい」。
心を込めて行く、どこに行くにでも。とても当たり前の言葉だけれど、旅をするとき私たちが意外に忘れがちなことである。でも意識してそうすると、何か新しい感覚が生まれるのだ。言ってみれば、心を込めると、その土地にある磁場が自分に新しい発見や新しい出会いをもたらしてくれるような。だから、心を込めて。この映画の主人公たちも、旅に精一杯の心を込めた。だから得られたたくさんのもの、そこを見逃さないでほしいのだ。


 ただの観光ではなく、そこに住んでいる自分を見たい。そこで生きていく自分の心模様を覗きたい

さて、まだそれほど旅に慣れていない頃、例えば学生時代。初めての国に行くたび、「いつかこの国に住みたい」と思ったのではないだろうか。
そう思うこともまた、旅の目的。つまり、単なる観光ではなく、そこに住んでいる自分を見たい、そこで生きていく自分の心模様を覗きたい、そういう衝動に駆られることもまた究極の旅の形だと思うからなのだ。
 
それを本当にやってしまったのが、もう1本の映画『トスカーナの休日』。主人公はサンフランシスコに住む女性作家、フランシス。こちらは、夫の浮気が発覚して離婚。
友人の勧めもあって、傷心旅行に選んだ場所はイタリア・トスカーナ地方だった。

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© 2020 Buena Vista Home Entertainment, Inc.

もちろん、ひとときの休息のつもりで出かけたのが、ひょんな事から通りすがりの1件の屋敷に急に住みたくなって衝動買いをしてしまう。
そんなことがあり得るのか? 正直初めてこの映画を見たときはそう思ったけれど、でも今ならばそれもありかなと思ったりする。
なぜならばこのコロナ禍、リモート生活が不可能ではないことが証明されたことももちろんだが、むしろ、想像もしなかったことが自分の人生に起きて、これから先の人生、何でもアリなのではないかという心の開放があったから。リゾートに家を買う人も増えているというけれど、突然違う国に住んでみようという気になる人もいるのではないか。
そのぐらいの大きな出来事だったからである。
 
もちろんこの映画の主人公フランシスは、この衝動買いに対して、後悔するようなことも多々あるわけだが、やはり現地トスカーナの人々に暖かく迎え入れられ、様々な人間関係を作っていくうちに、全く新しい人生と出会っていく。今この時期だからこそ、心動かされる旅のストーリーなのである。

この国に住みたいと思って住んでしまう、そういう破天荒でありながら強い意志を持った生き方、一度きりの人生、そういうことがあっても良いのではないかと強く思わされたりもする。
果たして自分にはできるのか? これは、そういう人生観の新しいシミュレーションの材料になるのではないだろうか?
もちろんここでもまた、それが許される環境にあること、そういう人生そのものへの憧れが生まれるが、逆にこんな選択もできる自分を、本気で目指してみても良いのではないかという、新しい目標を持たせてくれる作品でもあった。
とても軽やかなストーリーに見えるが、じつは旅を機会に、それこそ人生を丸ごと変えてしまうという可能性を見せられる、とてもエモーショナルで、ある種哲学的な作品なのである。


 自分自身に、知らない国、知らない場所を見せてあげる。新しい自分に会いに行く旅をしてほしい

さて、旅に出るときに思い出すもう1つの格言は、「1年に一度、今まで行ったことがない場所に行きなさい」。ダライ・ラマの言葉である。
これも当たり前の言葉に思えるが、考えれば考えるほど哲学的な言葉。大人になるにつれ、全てが知っている場所、行ったことのある場所、以前にやった経験があることばかり。それが大人の心をカチカチに硬くする。そして人生をつまらなくしている。子供の頃のように柔軟な心でスポンジのようにいろんなことを吸収するためには、どんな年齢になってもさらにさらに、自分自身に知らないこと、知らない場所を見せてあげることが重要なのだと訴える言葉である。
 
新しい自分に会いに行く旅、自分の閉ざされた心の扉を開く旅。せっかくならばそういう旅をしてほしい。
少なくとも観光や買い物にあけくれる旅に飽きたら、この2本の映画と、2つの言葉を思い出してみてほしい。しばらく旅に行けなかったこの時間が、眠っていた旅への本能を目覚めさせてくれたはずなのだから。


 
次回は、「ありきたりでない家族のあり方、そこに寄り添う人々の、幸せの見つけ方」をテーマにお届けします。お楽しみに。

イラスト:河村ふうこ

<掲載映画あらすじ・作品情報>

『食べて、祈って、恋をして』

ニューヨークで活躍する女性ジャーナリストが、仕事にプライベートに忙しい日々を送っていたが、心のどこかに満足しきれない思いを抱いていた。「昔はもっと毎日が輝いていたのに…」と。ある日、彼女はすべてを捨ててニューヨークからイタリア、インド、そしてバリ島へ“本当の自分”を探しに1年間の旅に出ることを決意する。イタリアでは、体型を気にせずグルメ三昧、インドでは瞑想に耽り、最後に訪れたバリ島では思いがけない出逢いが待っていたのだが…。
 
『食べて、祈って、恋をして』
Blu-ray:2,381円(税抜) 発売・販売:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 2010 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

『トスカーナの休日』

新しい生活、新しい出会い、新しい“私”…。
10日間の休日はいま、永遠になる―。
サンフランシスコで作家として活躍するフランシス(ダイアン・レイン)は、離婚によって幸せな家庭と住み慣れた家を失った。孤独に打ちひしがれる彼女を励まそうと、親友のパティが10日間のトスカーナ旅行をプレゼントする。気乗りしないままトスカーナへやってきたフランシスを待っていたのは、イタリアの輝く太陽と、【運命の出会い】―それは丘の上の町で見つけた“ブラマソーレ(太陽に焦がれる者)”という名を持つ荒れ果てた売り家だった。その家に強く惹かれ、衝動買いをしてしまったフランシスは、家屋の修復にのめり込むうちに、トスカーナの住人としてこの土地に溶け込んでいく。ユニークで愛すべき隣人たち、絵のように美しい風景、心まで満腹にするスロー・フード…そんなイタリア的ライフ・スタイルは、次第にフランシスの心を癒していくのだった。そして、女性として再び輝き始めたフランシスは、この“ブラマソーレ”で、新しい愛、本物の家族に恵まれることを望みながら、自分らしい“幸せ”に向かって歩き出す…。
全米で200万部のベストセラーとなった小説を原作に、美しい景色に彩られたトスカーナ地方を舞台に映画化。本作品でゴールデン・グローブ賞主演女優賞にノミネートされたダイアン・レイン主演による珠玉のハートウォーミング・ストーリー。

『トスカーナの休日』
DVD発売中/デジタル配信中 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2020 Buena Vista Home Entertainment, Inc.

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監修 齋藤 薫さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌やウェブサイトにおいて多数の連載を持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。鋭い視点に優しさと強さを含んだ独自のエッセイは、性別や年齢を超えた多くのファンに支持されている。『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)、『キレイはむしろ増えていく。大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)など著書多数。

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